「アナエロビック」は、現在世界的にコーヒー業界の中で注目を集めており、 コーヒーの概念が覆るような、今までにない味わいを楽しむことができます。
アナエロビック=精製方法
アナエロビックは精製方法の一種です。 コーヒーの果実を収穫してから、豆の状態にするまでの過程を精製方法といいます。 アナエロビックは基本的な精製にある工程を付け足した精製方法です。 詳しくお話しする前に、精製方法のおさらいとして「ウォッシュド」「ナチュラル」「ハニー」の違いを図にまとめておりますのでご覧ください。
基本の精製方法をご理解いただいた方が、今回の記事は分かりやすいと思います。 ウォッシュド・ナチュラル・ハニー精製方法の違いをわかりやすく解説 をご覧ください。
アナエロビックは無酸素状態で発酵させる
アナエロビック・ファーメンテーションが正式名称。 日本語訳をすると「嫌気性発酵」と言います。 ざっくりどういうことかというと、酸素のない状態で発酵させる精製方法です。 この方法はもともとワインの醸造で行われている手法です。 特にアロマを重視するワインでは、この嫌気性発酵を行うそうです。
収穫~乾燥をする工程の間に、写真のようなタンクに入れて無酸素状態で発酵を促します。
「基本的な精製方法にある工程を付け足した精製方法」とお伝えしましたが、
アナエロビックには、
「アナエロビックウォッシュド」
「アナエロビックナチュラル」
「アナエロビックハニー」
の3種類がございます。
アナエロビック(=嫌気性発酵)は、乾燥の手前で行います。
<アナエロビックウォッシュド>
内皮(パーチメント)を残して嫌気性発酵を行います。
<アナエロビックナチュラル>
収穫後そのまま嫌気性発酵を行います。
<アナエロビックハニー>
粘液(ミューレージ)・内皮を残して嫌気性発酵
このように通常では乾燥に入る一歩手前の段階で嫌気性発酵を行います。
ちなみにアナエロビックウォッシュドに関しては、
そのままタンクに入れても発酵する為の材料が内皮しかありません。
その為、発酵を促進する為、外皮も一緒に入れて発酵を促します。
味の特徴
嫌気性発酵を行うことの目的は2点あります。 ①無酸素状態のタンクの中で発酵が行われることで内圧が上がり、コーヒー豆への浸透が強まる。 ②嫌気性の微生物のみによる発酵が行われるので、独特な風味が生まれる。 アナエロビックコーヒーは、全てに共通して発酵した味わいを感じられます。 吟醸酒のような香りや、味覚に繊細なお客様の中には、食パンの風味(イースト菌)を感じる方もいらっしゃいました。
ちなみに私は色々な種類のアナエロビックを試しましたが、
結論、せっかくアナエロビックを楽しむならアナエロビックナチュラル派です!
理由としては、コーヒーの果実には多くの微生物が付着しており、アナエロビックナチュラルは果実のまま嫌気性発酵を行いますので強い発酵感や果実感を感じられます。
「コーヒー果実のジュース漬け」のような状態になると思うとイメージがしやすいと思います。
そう比べると、アナエロビックウォッシュドとアナエロビックハニーに関しては、発酵感や果実感は物足りなく感じるかと思います。
特に通常のナチュラル精製のコーヒーが好きな方は、アナエロビックナチュラルも一度試してみる価値があると思います。
アナエロビックに対して賛否両論別れる
アナエロビックは近年生まれた、今までの概念を覆すような衝撃的な精製方法です。 コーヒー豆の品質が上がるにつれて、コーヒーに対してフレーバーを求める需要が高まっている昨今のコーヒーのトレンドに対して、農家の方々も色々な試行錯誤をされているのだなと感じます。 しかし否定的な意見を持つ人もいらっしゃるのが事実です。 「もうここまでくると何でもありになってしまった」ということですね。 確かにアナエロビック精製のコーヒー豆は、コーヒー豆の品質を上げるというよりは、いかにうまく嫌気性発酵を行えるかに焦点を向けられます。 良くも悪くも収穫したコーヒーに味付けをするようなものです。 それぞれのコーヒー観がどのくらいまでを許容するかの部分だと思いますが、私は新しい取り組みが生まれることはコーヒーファンとしてもワクワクしますのでアナエロビックは賛成派です。
最後に
今回はアナエロビックについて解説しました! ご紹介したもの以外にも、今はダブルアナエロビックという、2回嫌気性発酵を行うものなど、アナエロビックから派生した方法も増え始めています。まだまだ発展の余地がありそうなアナエロビックは、トレンドに留まるのか、もしくは市民権を得てスタンダードになるのか、コーヒーに携わる人間として興味深く思います 私の運営する店舗では、アナエロビックナチュラルのコーヒー豆も取り扱っております。 今回の記事を読んでいただいて試してみたいと思った方は、是非一度お試しください!
それではまた次回もお会いしましょう!