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ITSUKI COFFEEが運営するコーヒーメディア、 「珈琲いろは」では、“当店以外の日常使いのコーヒー”も美味しく楽しんでもらいたいという思いから、 ご家庭でのコーヒーライフに役立つ情報をご紹介します。

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美味しいコーヒーのいれ方を徹底解説(12000字)|ハンドドリップのレシピから原理まで

コーヒーのハンドドリップは原理が分かれば決して難しくありません。
多くのバリスタは回数を重ねた経験上、感覚的に原理を分かっており、こちらの記事では、
バリスタが感覚的に理解している部分を、できる限り言語化して皆さんにお伝えします。

コーヒーを美味しく入れる為のレシピだけではなく、「どういう原理で美味しくなるのかの考え方」まで徹底的に解説します。

かなりの情報量を詰め込んでありますので、有料のコーヒーセミナー以上のボリュームとなっている自信があります。

前提としてお伝えしますが、今回ご紹介するレシピと考え方は、ハンドドリップの基本原理です。
基本原理=数学の公式のようなものです。

今回のレシピを完全再現できると90点以上のハンドドリップできるようになり、
その上で基本原理と豆の特徴を掛け合わせてアレンジができるようになると100点を目指せるようになります。

私たちも店頭でご提供するコーヒーのレシピは、基本原理をもとに考え、それぞれの豆に合わせたアレンジを行っております。

今後、豆の個性に合わせたアレンジの考え方も記事にしていこうと思っております。
今回は基本原理をご理解いただければ幸いです。


記事の流れ

こちらの記事はレシピ編「考え方」の解説編に分かれます。

前半…レシピ編
❶攪拌タイプ(浅煎り用)
➋ドームタイプ(深煎り用)
❸濃縮タイプ(粉で購入用)3つのレシピを紹介します。

後半…考え方の解説編
3つのレシピを参考に、なぜこのようなアプローチを取ったのか、考え方を解説します。

ここまで読んでいただけると、ハンドドリップにおける基本原理が身につきます。

レシピ編

3つのレシピの使い分け

基本的な各レシピの使い分け
ハンドドリップの方法はコーヒーの状態によって変える必要があります。
ご紹介する3つのレシピをマスターしていただければ、全てのコーヒーの状態をカバーすることができます。

まずは3種類のレシピの使い分けから見ていきましょう。
図をもとに、使用するコーヒーに合わせたレシピを採用してください。


焙煎度合いの見分け方
焙煎度合い別の特徴
スーパーや大手チェーンなどで購入した豆の場合
→基本的に中深煎り~深煎り

焙煎度合いはコーヒーショップで購入した場合、パッケージに記載されていることが多いのです。
しかしお店の裁量次第で表現できるので、場合によっては「本来中深煎りであるものが、浅煎りと表記されている」なんてこともあります。
お店が表記した焙煎度合いであっているのか?と疑問に思った場合は上記の表を基準に考えてみてください。

必要な道具

必要な道具一式
<必須>
①ドリッパー
まずはお手元にあるドリッパーを使用して問題ありません。
ただしドリッパーはコーヒーの味を左右する大きな要素です。

結論	
①攪拌レシピ=CAFEC(三洋産業)「フラワードリッパー」
②ドームタイプ
③濃縮タイプ=コーノ式「名門ドリッパー」
が推奨なのですが、今の段階では説明が難しいので、詳しくはこの記事の最後にてご紹介します。
ドリッパーのサイズ選びは非常に重要です。
多くのメーカーでは
①1~2人用(=小さいドリッパー)
②2~4人用(=大きいドリッパー)
の2サイズです。

飲みたい量が
250㎖未満=①小さいドリッパー
250㎖以上=②大きいドリッパーと使い分けてください。
※【目安】コーヒーカップ1杯…120㎖,マグカップ1杯…200㎖

②ペーパーフィルター
何を使用しても大きな問題はありません。
私が最も推奨するペーパーはCAFECの「アバカフィルター」(円錐ドリッパー用)です。
ペーパーフィルターについては、機会があれば記事を作ろうと思っています。

CAFEC ペーパーフィルター


③デジタルスケール
使用用途は、
⑴豆の重さの計量
⑵抽出中に何gお湯を注いでいるのかの計量
です。

④ドリップポット
ドリップポット
ドリップポットは、使い慣れるものなので特に指定はありません。
最初はネットで検索して出てくる安価なものでも十分です。
予算をかけられる方は、温度調節機能付きの電子ドリップポットは利便性が高いのでお勧めします。

YAMAZEN / YKG-C800-E

ドリップポットを使用する際のお湯の量は5~7割が推奨です。

満水にしてしまうと少し傾けるだけで勢いよくお湯が出てしまい注ぎづらく、反対に少なすぎると湯温が下がってしまいます。


⑤コーヒーサーバー
コーヒーサーバー
コーヒーサーバーも何を使っても良いです。
ただし私自身、しばしば不便に感じることなのですが、コーヒーサーバーには細かいメモリがありません。

解決方法として、
①耐熱の計量カップを使用(細かいメモリが付いています)
②コーヒーサーバーに水を入れて重さを計り、テープなどでもよいので、抽出したい量に印をつける(㎖=g)

<重要>
サーバーの口径はドリッパーよりも小さいものをお選びください。
大きいものは、ドリッパーを乗せることができません。
必ずサイズを確認して購入してください。
 
⑥タイマー
抽出時間を計測します。
こちらはスマホのタイマー機能で十分です。
 
<あれば更に良い>
⑦温度計
面倒ではありますが、温度を安定させることで抽出エラーは起きにくくなります。
 
⑧コーヒーミル
コーヒー器具の中で、最も導入のハードルが高いのがミルだと思います。
気になる方は、2000円台の手挽きミルから始めてみてください。

HARIO / コーヒーミル・セラミックスリム

コーヒーの淹れ方

❶撹拌タイプ(浅煎り用)

浅煎り用コーヒーの淹れ方早見表
<ご紹介の分量>
完成量200g 豆量18g 注ぐ量240gで行います。
 
●下準備
スケールにサーバー、ドリッパー、ペーパーフィルター、粉を乗せて、重量を0にしてセット完了。
粉はドリッパーをゆすって平らに均してください。
 
<挽き目>中細挽き
中細挽きのコーヒーの粉
<お湯の温度>91~95℃
温度計がない場合・・・ドリップポッドでお湯を沸騰するまで沸かし、フタを開けて1分半ほど待つとおおよそ適温となります。
(火傷にはお気を付けください。)
 
●抽出開始(タイマースタート!)
① 0:00~0:20
浅煎りのコーヒーのドリップ
お湯を豆の重さと同じくらいの量(18g程度)サッと注ぐ。
注ぎ終えたらすぐにドリッパーを持ち上げ、回転させるように回し混ぜる。
 
② 0:20~0:40
再度豆と同じ重さくらいのお湯を注ぎます。
今回は1円玉くらいの大きさの円で中心に静かに注ぎます。
注意点として今回は回転させません。
スケールの重量は36g程度となります。
 
③ 0:40~1:40
勢いよくお湯を注ぐ
ここから一気に注ぎます。
1:40のタイミングで240g(注ぐ量)を注ぎ切るペース
 
<注ぎ方>
ドリッパー内で粉が攪拌するように。
とにかく攪拌をさせて時間内にお湯を注ぎ切ることが重要です。
お湯を注ぐ位置はそこまで気にしなくて良いですが、ドリッパーの縁にはつかないように気を付けます。
 
<注ぎ分ける回数・タイミング>
だいたい3~4回程度に分けて注ぎますが、回数が多くなっても構いません。
注ぐタイミングや止めるタイミングはあまり気にせず、以下の2点を意識してください。
・1:40のタイミングで注ぐ量を注ぎ切る
・攪拌しながら注ぐ
 
 
④ 1:40~落ちきるまで
 
後はドリッパー内のお湯が落ちきるのを待つだけです。
完成量によっても変わってきますが、理想的な落ちきる時間は2:30~3:00程度です。
 

ポイント
①落ちきる時間
後ほど詳しく説明しますが、こちらのレシピは時間で旨味と雑味のコントロールを行います。
その為、落ちきる時間が非常に重要です。
 
早く落ちきる→粉が粗い可能性があり。
遅く落ちきる→粉が細かい可能性あり。
 
この様に時間の調整は基本的に挽き目で調整が可能です。
 
②攪拌させる
このレシピでは丁寧にドームを作るという概念はありません。
ドリッパー内でしっかりとコーヒーの粉が攪拌をさせることで、コーヒーの旨味を余すことなく抽出ができます。
攪拌のさせ方は、太いお湯でドリッパーの底を目掛けて突き刺して掻き出すようなイメージです。
派手に動かす必要はありません。
 
➋ドームタイプ(深煎り用)
ドームタイプの淹れ方早見表
<今回の分量>
完成量200g 豆量20g 注ぐ量260gで行います。
 
●下準備
スケールにサーバー、ドリッパー、ペーパーフィルター、粉を乗せて、重量を0にしてセット完了。
粉はドリッパーをゆすって平らに均してください。
(こちらのレシピでは特に粉を最初に均すことが重要です。
粉が傾いていたり偏っていたりするときれいにドームを作ることができません。)
 
<挽き目>中挽き
<お湯の温度>83℃~86℃
温度計がない場合・・・ドリップポッドでお湯を沸騰するまで沸かし、コーヒーサーバーへお湯を移し、再度ドリップポッドへ移すとおおよそ適温となります。
(くれぐれも火傷にはお気を付けください。)
 
●抽出開始(タイマースタート!)
① 0:00~0:20
ドーム型ドリップ
お湯を豆の重さと同じ量(今回は20g程度)を中心から100円玉程度の円の範囲内でゆっくりと細く注ぐ。
20秒かけて20gを注ぐイメージ。
注ぎ続ける必要はありません。
ペースが速くなってしまった場合は、注ぐのをストップして調整してください。


② 0:20~1:00
 
①と同様の工程を行います。
今回の分量では、0:40で40g、1:00で60gとなります。
ドーム型ドリップの注意点
このくらいから白い泡が多く浮き出てきます。
白い泡をドリッパーの中央に留めるように意識してください。
縁にこぼれそうになったら一度注ぐのをやめ、落ち着いてから注ぎ始めます。
また一気に注ぐとこぼれやすいです。
注ぐ位置はあくまでも真ん中から100円玉程度の範囲内です。
 
 
③ 1:00~を目安
ここからドームを大きくしていきますが、この作業でも白い泡はできる限り中心にとどまるように意識してください。
 
<注ぎ方>
円の大きさは大きくても100円玉くらいの大きさに、注ぐ量は先ほどよりも少し太めのお湯で注ぎ、ドームを大きくしていきます。
「注いで止めて、注いで止めて」を繰り返します。
 
 
<注ぐ回数・タイミング>
注ぐ回数は、コーヒーのガスの状態によって変動する為、回数は気にしなくて大丈夫です。
できる限り長い時間ドームを崩れないように意識してください。
 
注ぐのを止めるタイミング・・・ドームの表面やドリッパーの縁にお湯がにじんだタイミング(これ以上注ぐとドームが崩れやすくなります)
 
次に注ぐタイミング・・・ドームの真ん中が凹み始めたタイミング
白い泡が浮いているコーヒードーム
<ドームが崩れてしまったら>
ドームが崩れたら、画像のようにシャバシャバな状態になります。
シャバシャバな状態になってもやることは同じです。
できる限り白い泡を中央に留めます。
 
この工程を繰り返し、下のサーバーに完成量が抽出されたら、ドリッパーの中にお湯がまだ入っていても、ドリッパーを外し完成です。
 
ポイント白い泡を下に落とさない
この後詳しく解説しますが、白い泡=雑味だと思ってください。
・真ん中を凹ませすぎない
・白い泡を真ん中に留めておく(=ドリッパーの縁につかないように)
の2点が重要です。
 
②ドームをできるだけ長く維持する
ドームはガスの発生により膨らむので、いずれガスが足りなくなり崩れます。
特に中深煎りの豆や焙煎から日数が経っている豆は、ガスの含有量が少ない為、ドームが崩れやすくなります。
しかしシャバシャバな状態は、白い泡を中央に留めづらくなります。
できるだけ長い時間ドームを維持することが大切です。
 
<長く維持するためのコツ>
お湯の量に対してガスの発生量が追い付かないときにドームが崩れます。
従って一度に注ぐお湯の量が多いと崩れやすくなります。
前述しましたが、お湯の表面やドリッパーの縁にお湯がにじみ始めたら、注ぐのをやめてください。

❸濃縮タイプ(粉で購入用)
濃縮タイプの早見表
<今回の分量>
完成量200g 粉量22g 抽出量140g挽き目は市販品で一般的な中細挽きで行います。
 
●下準備
スケールにサーバー、ドリッパー、ペーパーフィルター、粉を乗せてセット完了。
粉はドリッパーをゆすって平らに均してください。
 
※1 お湯を注ぐ量をスケールで計らなくても大丈夫ですが、毎回安定した抽出を目的にする場合は、目安として計量することをお勧めします。
※2 このレシピの場合、サーバーに印をつける量は、完成量ではなく抽出量に印をつけて下さい。
 
<お湯の温度>中細挽き…83~86℃ (今回はこちら)/ 中挽き…87~90℃
 
●抽出開始(タイマースタート!)

 0:00~1:30以内
点滴でお湯を注ぎ続ける
こちらのレシピは最初から最後まで注ぎ続けます。
100円玉程度の円を描きながら点滴になるくらい細く、注ぎ続けます。
(完成量が多い場合は少し太目に注いでも大丈夫です。)

下のサーバーに抽出量(140g)が抽出されたら、ドリッパーの中にお湯がまだ入っていても、ドリッパーを外します。
これを1:30以内に完了します。
 
 抽出を終えたら
完成量が200g(㎖)ですので、お湯を200㎖(=60g)になるまで足します。
しっかりと混ぜて完成です。

ポイント
①薄いコーヒーにはなりません!
ポイントというよりは誤解を解くような内容になりますが、決して薄いコーヒーにはなりません。
後編で詳しく解説していますが、このレシピで抽出するコーヒーは、旨味がたっぷりの濃いコーヒーです。
 
②細く注ぎ続けるのが難しい場合は
最初のうちは細く注ぎ続けるのが難しいかもしれません。
(慣れればできるようになります。) 
その場合は、「注いで止める、注いで止める」を繰り返して下さい。

「考え方」の解説編

簡単な話、美味しいコーヒー=「旨味が多く、雑味が少ない」コーヒーです。
※旨味=ポジティブな成分 雑味=ネガティブな成分
 
つまり、どうやったら旨味が出て、どうやったら雑味を抑えられるのかを理解することで、誰でも美味しいコーヒーが淹れられます。
 
先に結論を言います。
攪拌レシピ(浅煎り用)
基本的に雑味は少ないが後半に少しずつ出るので、短時間で成分を出し尽くすことで旨味>雑味になる
 
ドームレシピ(深煎り用)
白い泡=雑味なので、白い泡を下に落とさず抽出することで旨味>雑味になる
 
濃縮レシピ(粉で購入用)
1:30以降に旨味<雑味になるので、その前に抽出を終えれば、旨味>雑味になる
 
この理由をこれから詳しく解説をします。
 
 
ハンドドリップで旨味と雑味をコントロールするには、大きく分けて4つの要素があります。
①抽出時間
②注ぎ方
③挽き目
④湯温
 
この4つを2パターンに分類すると以下のようになります。
 
旨味と雑味の量をそれぞれでコントロールできる
→①抽出時間②注ぎ方
 
旨味が出たら同じく雑味も出る(比例関係)
→③挽き目④湯温
 
このことをご理解いただいた上で、
「①抽出時間→②注ぎ方」→「③挽き目・④湯温」の順で説明を行います。
①抽出時間
早速ですが、時間と抽出成分の関係性が分かる検証をご紹介します。
<検証内容>
0:00~3:45の間、一定の速度でハンドドリップを行い、
⑴0:00~0:45
⑵0:46~1:30
⑶1:31~2:15
⑷2:16~3:00
⑸3:01~3:45
それぞれの時間で抽出された成分をテイスティングして、味覚の成分を「旨味」と「雑味」の2つに絞って評価します。
この内容で、
①挽き立ての焙煎度合い別(4種)
②粉で購入のコーヒー(4種)
計8種を検証しました。
 
※使用する豆は以下の豆を使用しております。
・浅煎りのブレンド
・中煎りのブレンド
・中深煎りのブレンド
・深煎りのブレンド
 
成分の出方は豆によっても異なるのですが、複数豆をブレンドすることで純粋な焙煎度合いによる成分の出方を検証することができます。
①挽き立ての焙煎度合い別(4種)
浅煎り中煎りはグラフの動きが近い→浅煎り中深煎り深煎りはグラフの動きが近い→深煎り
4つを2つに分けて考えていきます。
 
 
グラフから読み取れる考察結果は以下の通りです。
 
浅煎り:
旨味…前半にほとんど抽出される
    ​雑味…全体的に少ないが、3:00から抽出され始める
→3:00以内で仕上げることで旨味が多く、雑味が少ないコーヒーができる。
 
深煎り:
​旨味…前半に多く抽出されるが、後半にも抽出される
    ​雑味…後半に多く抽出されるが、前半にも抽出される
→時間でのコントロールは難しい。


②粉で購入のコーヒー(4種)
時間と成分の関係性の図
<4種類の共通点>
・挽き立てよりも全体的に、旨味が少なく雑味が多い
・2:15~3:00の間に雑味は4になる
・1:30~2:15の間に旨味と雑味の逆転が起こる
・挽き立ては、旨味が1:30で上昇するが、粉は初めからピークを迎える。
(今回は脱線するので詳しく解説しませんが、ガスの含有量に関係します。
粉の状態のコーヒーは、蒸らしの時間が短くて済む為、最初から旨味が出やすいです。)

 
このことから以下のように考察します。
 
粉で購入:
​旨味…挽き立てよりも下降が早い
雑味…挽き立てよりも上昇が早い
※1:30~2:15の間で旨味と雑味が逆転する
②注ぎ方​
〇白い泡について
白い泡
注ぎ方をご理解いただく上で、「白い泡」が重要なポイントです。
 
白い泡の正体は「ガス」です。
コーヒーの抽出は微粉から雑味が多く発生します。
微粉はどれだけ優秀なコーヒーミルを使用しても発生します。
そんなコーヒー抽出において邪魔な存在の微粉ですが、白い泡は微粉(=雑味)を吸着し、ドリッパーの上部に浮き上げてくれます。
白い泡=ガスの解説図
ただし白い泡はガスの含有量が少ないコーヒーの場合、活用することができません。
 
先に結論を言うと、白い泡とそれぞれのレシピの関係性は、
浅煎り​​:白い泡を活用しない
深煎り​:​白い泡を活用する
粉で購入​白い泡を活用したいができない
となります。
 
 
ここからは「②注ぎ方」について「①抽出時間」と合わせて詳しく解説していきます。
 
 
❶攪拌タイプ(浅煎り用)
攪拌タイプ白い泡を気にせず抽出を行います。
 
浅煎りの時間と抽出成分の関係性は以下の通りでした。
旨味…前半にほとんど抽出される
雑味…全体的に少ないが、3:00から抽出され始める
→短時間で仕上げることで旨味が多く、雑味が少ないコーヒーができる。
 
そもそも雑味が少ないので、白い泡を気にして丁寧に注ぐよりも、ドリッパー内を攪拌させ、短い時間で成分を出し切ることを優先します。
雑味が出てくる前に旨味を出し切るイメージです。
 
このことから
「雑味が少ない2:30~3:00までの間で、旨味成分をしっかりと引き出すこと」
を目的に抽出を行います。
➋ドームタイプ(深煎り用)
ドームタイプ白い泡を活用します。
 
深煎りの時間と抽出成分の関係性は以下の通りでした。
旨味…前半に多く抽出されるが、後半にも抽出される
雑味…後半に多く抽出されるが、前半にも抽出される
→時間でのコントロールは難しい。
 
挽き立ての中深煎り・深煎りのコーヒーはガスをしっかりと含んでいます。
したがって白い泡で雑味のコントロールが可能になります。
つまり「時間」ではなく「注ぎ方」で雑味をコントロールします。
 
このことから、
「前半から発生する雑味を白い泡を使ってコントロールすること」
を目的に抽出をします。
 
白い泡を下に落とさず、ドリッパー内に留める方法としては、
①真ん中を凹ませすぎないこと
②白い泡を真ん中に留めておくこと(ドリッパーの縁につかないように)
の2点があげられます。
 
①「真ん中を凹ませすぎないこと」はイメージしやすいと思います。
シンプルに白い泡が下へ行くとサーバーに落ちてしまうためです。
 
②「白い泡を真ん中に留めておくこと(ドリッパーの縁につかないように)」
はなぜ重要なのでしょうか。
 
これはドリッパーの構造上、縁を伝って下に落ちていくということが理由です。
リブを伝うコーヒー
このように液体は、リブというドリッパーの溝を伝って上部からも流れていきます。
中心に白い泡を留めると、リブを伝うことも防ぐことができます。
白い泡=雑味と考えて、可能な限り雑味をドリッパー内に残すことをイメージしてみてください。
❸濃縮タイプ(粉で購入用)
粉の状態のコーヒーは、「白い泡を活用したいができない」と言えます。
それは豆から挽いて時間が経っていることにより、ガスの多くが抜けてしまっている為、白い泡は多少発生しますが、コントロールが可能なほどは発生しません。
 
つまり粉で購入したコーヒーは、注ぎ方でのコントロールが難しいので、時間でのコントロールをメインに考える必要があります。
 
粉で購入したコーヒーの時間と抽出成分の関係性は以下の通りでした。
旨味…挽き立てよりも下降が早い
雑味…挽き立てよりも上昇が早い
→1:30~2:15の間で旨味と雑味が逆転する
 
このことから、
「旨味と雑味の逆転が起こり始める1:30までに抽出を終えること」
を目的に抽出をします。


このレシピの大きなポイントは2つあります。
 
①細いお湯で注ぎ続ける
ガスが抜けているとはいえ、微量の白い泡は発生します。
しかしガスが少ないので、白い泡を持ち上げる力が非常に弱いです。
あまりドリッパー内に衝撃を与えない注ぎ方が、白い泡の持ち上げる力を邪魔しない注ぎ方となります。(攪拌はNG)
 
「衝撃を与えないこと」「短時間で抽出を終えること」の2つを満たす手段として、細いお湯で注ぎ続けることが重要としています。
 
※一度に多い量を抽出する場合は細く注いでいると時間がかかりすぎる場合があります。その場合は少し太め注いでも構いません。
1:30で抽出を終えることを優先しましょう。
(遅くても2分以内)

②全体の約1/3をお湯で差し湯する
コーヒーの成分
コーヒーの濃度=旨味の量です。
世間一般的に「薄いコーヒー」と認識されているコーヒーは、「旨味少なく、雑味が多いコーヒー」です。
(シンプルに粉が少なすぎる場合もありますが…)
 
今回の場合は旨味が前半部分で多くが抽出されるので、
1分半で止めたコーヒーは、旨味の多い濃いコーヒーとなります。
 
旨味と雑味が逆転したあとの液体を落とすことは、
「旨味の多い濃いコーヒーを、雑味の多い薄いコーヒーで薄める」ことになります。
それであれば「旨味も雑味もない、きれいなお湯で薄めよう」という考え方です。
抽出時間と注ぎ方のまとめ
 
<浅煎りレシピ(攪拌タイプ)>
「雑味が少ない2:30までの間に、旨味成分をしっかりと引き出すこと」
→時間を軸に考えた抽出
 
<深煎りレシピ(ドームタイプ)>
「前半から発生する雑味を白い泡を使ってコントロールすること」
→注ぎ方を軸に考えた抽出
 
<粉用レシピ(濃縮タイプ)>
「旨味と雑味の逆転が起こり始める1:30までに抽出を終え、きれいなお湯で差し湯する」
→時間を軸に考えた抽出
 
 
③挽き目・④湯温
 
「挽き目」と「湯温」は雑味をカットし、旨味だけを抽出するなどのコントロールはできません。
旨味が抽出される量が増えると、比例して雑味が抽出される量も増えます。
 
このことから以下のことをイメージしてください。
旨味と雑味のコントロールができる「抽出時間」「注ぎ方」→抽出の「軸」
旨味と雑味が比例関係の「挽き目」「湯温」→「軸」に合わせて適切な環境を整える
 
挽き目・湯温と抽出成分は以下の関係性があります。
挽き目・温度と成分の関係性
<挽き目>
細かいほど成分が出て、粗いほど成分が出ません。
挽き目は基本的にハンドドリップでは、中細挽き~中挽きを推奨します。
 
 
<湯温>
95℃から100℃に上がることで、旨味の量は変わりませんが雑味の量は増える為、沸騰したお湯は推奨しません。
 
80℃の低温抽出は、あえて使用することもあるのですが、なかなか旨味が抽出されにくいので、基本的には推奨しません。
 
ハンドドリップにおいて適切なお湯の温度は、83℃~95℃を推奨します。
 
 
それでは各レシピの目的に合わせた挽き目と湯温を考えていきましょう。
❶攪拌タイプ(浅煎り用)
浅煎りの抽出目的は以下の通りでした。
「雑味が少ない2:30~3:00までの間で、旨味成分をしっかりと引き出すこと」
 
抽出の前半部分は雑味の量が極めて少ない浅煎りは、抽出前半でいかに旨味成分を引き出せるかが重要になります。
したがって挽き目と湯温は雑味を気にせず、短時間で最大限成分が出やすい環境を整えましょう。
 
そのことから推奨の挽き目と湯温は、以下の通りです。
挽き目…中細挽き
温度…91~95℃
 
 
➋ドームタイプ(深煎り用)
深煎りコーヒーの抽出目的は以下の通りでした。
「前半から発生する雑味を白い泡を使ってコントロールすること」
 
深煎りは雑味が前半からも発生し、時間は気にせずにじっくりコントロールした抽出を行うので、無理に挽き目と温度を抽出されやすい環境を整える必要がありません。
 
 
そのことから推奨の挽き目と湯温は、以下の通りです。
挽き目…中挽き
温度…83℃~86℃
 
 
❸濃縮タイプ(粉で購入用)
粉で購入した場合の抽出目的は以下の通りでした。
「旨味と雑味の逆転が起こる1:30までに抽出を終えること」
 
短時間で仕上げますが、浅煎りのように挽き目も湯温も抽出しやすい環境を整えてしまうと、雑味も抽出されてしまいます。
 
粉で購入した場合は、
挽き目の指定が難しい(すでに挽かれている)場合もあるので、挽き目に合わせて温度を調整します。
 
①中細挽き(出やすい)の場合→83~86℃(低く=出にくい)
②中挽き(出にくい)の場合→87~90℃(高く=出やすい) 
※91℃以上は出すぎてしまいます。
 
市販されているコーヒー粉(スーパーなどで売られているもの)は、基本的に中細挽きが多く、挽き目を指定できる場合も、中細挽きに合わせた①の組み合わせが推奨です。
挽き目の調整(自宅で豆を挽く方向け)
味わいの変数4つ(時間・注ぎ方・挽き目・湯温)の内、
コーヒーの味へ最も影響を与える要素は挽き目です。
ほんの少しの違いでも味へ大きく影響します。
 
先ほどお伝えした、撹拌タイプ(浅煎り)→中細挽き、ドームタイプ(深煎り)→中挽きというのはあくまでも指標です。
コーヒーの粉の挽き目の比較画像
正直これを見てもイメージしづらいかと思います。
私たちのお店では、先日から店頭とオンラインショップで希望する方には挽き目のサンプルをお渡しするサービスを開始しましたが、ある程度の参考にはなっても、見比べて厳密に挽き目をサンプルに合わせることは難しいです。
 
結論、豆からご自宅で挽く方は何度かいろいろな挽き目を調整して、美味しいと思ったベストの挽き目を探していただく必要があります。
 
ここからはベストな挽き目の見つけ方をお伝えします。
挽き目の基準
今までは挽き目を4段階(細挽き・中細挽き・中挽き・粗挽き)で表現してきました。
世間一般的にもこの4段階の分け方をすることが多いです。
しかし挽き目はもっともっと繊細です。
イメージ的には16段階くらいあると思って考えてみてください。
 
 
今回ご紹介しているレシピの挽き目は細分化した挽き目に当てはめると、
撹拌レシピ…⑤中細挽きの少し細かめ
ドームレシピ…⑩中挽きの少し細かめ
が理想となります。
 
このように挽き目を細分化してイメージすると、あなたの好みに合わせやすくなると思います。
好みの挽き目を探すときに注意すべきことは、「抽出時間」「注ぎ方」「湯温」は変えずに試してみてください。
挽き目以外を固定することで適切な挽き目を見つけることができます。
推奨ドリッパーの解説
ここまで読んでいただいて、やっとドリッパーの説明ができます。
まずはドリッパーの特徴や注目するポイントを2点紹介します。

①円錐形or台形
円錐形と台形ドリッパーの比較
円錐形と台形は画像のように異なります。
この外見の形以外にも大きく異なる点が、底の穴です。
ドリッパーを上から見た図
円錐形…大きな一つ穴
台形…小さい複数個の穴
という特徴があります。
 
円錐形は穴が大きい分、注ぎ方次第で抽出速度が変わります。
反対に台形は穴が小さい分、どんな注ぎ方をしてもお湯の落ちる速度は一定です。
 
円錐形がマニュアルに対して、台形はセミオート。
・60点の可能性もあるが100点を狙える円錐形
・80点を安定して叩き出せる台形
といったイメージです。
 
考え方次第で選択は変わりますが、今後も継続的にコーヒーを淹れるという方は、円錐形がおすすめです。


②リブの長さ、深さ
ドリッパーのリブ
リブとはドリッパーの側面についている突起です。
リブにはお湯をスムーズに下に落とす役目があり、リブを伝ってお湯が落ちていきます。
リブがあることで、ペーパーとドリッパーに隙間が生まれ、お湯が落ちやすくなる仕組みです。
したがってリブが深いドリッパーほど、お湯を伝って抽出を早めることが可能です。
 
 
各レシピの推奨ドリッパーとその理由

❶攪拌タイプ(浅煎り用)
フラワードリッパー
CAFECT(三洋産業) 「フラワードリッパー」
フラワードリッパーを上から見た図
このドリッパーの特徴は、えぐられたように深いリブです。
白い泡を気にしないのでリブを伝って落ちても問題なく、むしろ抽出速度の速さが非常に相性の良いポイントです。


➋ドームタイプ(深煎り用)
コーノ式「名門ドリッパー」
コーノ式「名門ドリッパー」
このドリッパーの特徴は、途中でリブがなくなっていること。
リブのない部分はペーパーが圧着し、上部から液体が下に落ちにくくなります。
白い泡を持ち上げるこちらのレシピには非常に相性が良いです。
 
尚、コーノ式は名門ドリッパーの中にもリブの長さ違いで3種類あります。
〇2人用(小さいドリッパー)のオススメは、MDN-21(リブの長さ標準)
〇4人用(大きいドリッパー)のオススメは、MDK-41(リブの長さ短め)

❸濃縮タイプ(粉で購入用)
 コーノ式「名門ドリッパー」
➋ドームタイプと同じくコーノ式が推奨です。
白い泡の発生は少ないものの、上に持ち上げる効果は微量ながらあります。
この点から考えて、上部から液体が下に落ちにくいコーノ式がおすすめです。
 
こちらもMDN-21とMDK-41がオススメです。


「カリタの台形」や「HARIOのV60」はダメなの?
カリタとHARIOのドリッパーが並んだ図
日本で最もシェアが高い「カリタの台形」
近年カリタを追いあげる勢いの「ハリオのV60 」
どちらも非常に使い勝手の良いドリッパーですが、今回はそれぞれのレシピに対して一番オススメのドリッパーとはなりませんでした。
 
カリタ…先ほどの説明通り、セミオートのような台形型は、80点を安定的に出すドリッパーです。
今回の記事は、ご家庭でも100点のコーヒーを楽しんでもらいたいという考えで書いておりますので、それぞれのレシピの推奨にはなりませんでした。
 
V60…リブが上部まであり、フラワーよりも浅いです。
位置づけとしてはそれぞれのレシピの2番手的な存在で、汎用性が高いドリッパーです。
価格に関しては、フラワーやコーノ式よりも安価であり、手に入りやすいので、最初の一台にはオススメかもしれません。

最後に

ここまで長い記事にお付き合いいただきありがとうございました!
かなりボリュームのある内容だったと思いますが、ここまでの内容をご理解いただければ、基本的なコーヒーの抽出原理はご理解いただけたと言えます。
 
この基礎をご理解いただき安定してコーヒーを淹れられるようになった次の一歩は、レシピのアレンジです。
例えば、「このコーヒー浅煎りだけど、ちょっと雑味を感じるな」と感じた場合は、❶攪拌タイプ(浅煎り用)❸濃縮タイプの要素を少し加えてみるなど。
 
今後、豆の個性に合わせたアレンジの考え方も記事にしていこうと思っております。
投稿次第、ピックアップしてこちらにもリンクを掲載します。
 
 
コーヒーには確実な教科書のようなものはなく、独学で学んでいくにはなかなか難しい嗜好品だと思いますので、今後もできる限り正解への近道をご案内していきたいと思っております!
 
これからも「珈琲いろは」では、応用的な部分も別記事で投稿していこうと思っております。
投稿する都度、こちらの記事の最後にリンクを貼っていきます!

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【コーヒーのいれ方の応用記事】

コーヒーの蒸らしは重要!蒸らし時間に何が行われているのかを解説